賃貸マンションの設計

しかし、単にこれらの判断基準を満たしているからといって、その投資を実行すべきだという結論に至るとは限りません。
投資をするからには、明確な戦略が必要です。
日本では戦後長い期間にわたって、不動産の需要が供給を上回る時代が続きました。
日本経済の復興・発展が続き、オフィスビルに入居を希望する企業の需要が旺盛で、賃貸オフィスビル事業は立地さえ間違えなければ、かなりの確率で成功しました。
良質な住宅が不足するなかで、分譲マンション、賃貸マンション事業も順調に成長してきました。
しかし、需要と供給の関係はすでに逆転し、今や供給が需要を上回る時代に入りました。
供給が需要よりも多いということは、供給者問での競争が激しくなることを意味します。
競争が激しいと、投資判断時点で投資基準を満たしているからといって、その投資が成功に終わるとは限りません。
最終的に投資不動産を売却するなど、投資資金を回収するまでの明確な投資戦略が求められます。
また、複数の不動産に投資するときは、投資対象となっている不動産の最適な組み合わせも、同時に考えておかなくてはなりません。
そこで本章では、不動産へ投資をするときに不可欠な以下の6項目の投資戦略について説明していくこととします。
リスクとリターンをコントロールする:ポートフォリオ運用借入金を活用してリターンを向上させる:レバレッジ不動産の資産価値を向上させる:バリューアップ成長戦略を立てる:外部成長と内部成長適切なタイミングで投資判断をする:リアル・オプション常に不動産売却を意識する:出口戦略なお本書の性格から、詳しい説明や数式は専門書に委ね、ここではその基本的な考え方に絞って説明を進めていきます。
ポートフォリオ理論とは何か不動産や株式、債券などに投資するときに、どのように投資対象を組み合わせたら有利な投資となるかを考えるのに役立つのが、ハリー・マ-コヴイツツ1990年にノーベル経済学賞受賞)が提唱したポートフォリオ理論(Port-folio Theory)です。
ポートフォリオという言葉は、もともと「紙バサミ」や「書類入れ」という意味です。
これらは、いくつかの書類を一つに束ねておく機能を持っています。
そこで、複数の資産を束ねて(まとめて)運用することをポートフォリオ連用と呼ぶようになったのです。
ポートフォリオ理論の考え方は、株式や債券への投資と不動産への投資のリスク・リターンを比較するときや、いくつかの不動産をまとめて運用するときなどに利用されますので、基本的な考え方を押さえておくことが必要です。
ここでは、その概略について説明しておくこととします。
昔からよく、 「一つのカゴにすべての卵を入れるな」という言葉が使われています。
全部の卵を一つのカゴに入れると、そのカゴが何らかの拍子で揺れたり落下したりして、すべての卵が割れてしまう危険があります。
一方、いくつかのカゴに分散して入れておけば、一つのカゴに何かトラブルがあってその中の卵が全部割れたとしても、残りのカゴの卵は無傷のままです。
つまり、一つのカゴにすべての卵を入れない方が安全だ(-リスクが少ない)という判断になるのです。
大事なことは、卵をいくつかのカゴに分散して入れておくということです。
卵をいくつかのカゴに分けて入れておくことによって、卵が割れるリスクを減らすことができるからです。
同じことは、自分の持っているお金を運用するときにもあてはまります。
投資の世界では、古くから三分法がよいといわれてきました。
これは資金を運用するときに、預貯金(現金)と株式と不動産の3つに分けることを勧めるものです。
3つに分散していれば、どれかで損をしたり運用利回りが低くなっても、ほかで利益を得たり高利回りの連用ができたりするので、安定した(リスクを分散した)資金運用ができるというわけです。
このように、いくつかの種類の異なる資産に分散して投資をすることによって、一定のリターンを確保しつつ投資リスクを減らそうというのが、ポートフォリオ理論の基本的な発想です。
ここで一つ、覚えておくべきことがあります。
この考え方は多くの投資の場合にあてはまるのですが、リスクを減らすという作用をよりいっそう効果的なものにするためには、投資対象となる資産が「互いに関係が薄く」かつ「数多くある」ことが望ましいのです。
投資する資産が「互いに関係が薄く」の部分について考えてみましょう。
例えば、隣接して建っている賃貸オフィスビルAとBの2つに投資したとしましょう。
この場合、 A、 Bのビルが建っている地域の人気が落ちたり、近くに素晴らしいビルが建てられてテナント(ビルの入居者)がそちらに移転すると、両方のビルの価値が同時に下がってしまうかもしれません。
隣り合わせて建っているため、何かの環境変化があったときに生じるリスクもほぼ同じになってしまうのです。
これでは、せっかく2つのビルに分散して投資したのに、投資リスクを減らしたことになりません。
ところが、オフィスビルBの代わりに、まったく違う場所にある賃貸住宅Cに投資をしたとしましょう。
賃貸住宅Cのある地域の動きは、オフィスビルA, Bのある地域とあまり関係がありませんし、利用方法もビルと住宅とで違いますから、オフィスビルAと賃貸住宅Cの価格の動きが、まったく一致する可能性はかなり低いと考えられます。
仮にオフィスビルAの価格が下落しても、その下落分は賃貸住宅Cの価格上昇で補うこともあり得るわけです。
当然、その道もあるでしょう。
あるいは両方とも価格が下落するときもあるかもしれません。
その場合でもAの下落幅よりもCの方が小さければ、 Aだけに投資したときと比べると全体としての下落幅は緩和されるので、ビルと住宅に分散して投資したメリットがあることになります。
このように、互いに関係が薄い資産に投資すると、何かがあったときに両方の資産価値(そこから生まれる利益も同じです)の動きが一致しないで、むしろ互いに打ち消しあったり緩和しあったりするた釧こ、全体としての投資リスクを減らせるのです。
ここでは一般的に「互いに関係が薄い」という表現をしましたが、不動産に投資するときに互いに関係が薄い不動産を選ぶためには、用途(オフィスビルか住宅か商業施設かなど)や場所(大都市圏か地方か、東京都内でも何区かなど)の異なるものを組み合わせて投資するのが現実的でしょう。
ここでいえば、特性の異なる不動産に投資するということです。
もう一つ、ポートフォリオ理論によるリスク減少を効果的にするための条件として、 「投資対象が数多くあること」が望ましいと説明しましたが、それは以下の理由です。
「一つのカゴにすべての卵を入れるな」という言葉通り、いくつかのカゴに卵を分散して入れておけば、卵が同時にまとめて割れてしまうリスクは、間違いなく減ります。
このときカゴの数(資産の数)が多ければ多いほど、卵がまとめて割れてしまう危険性は低くなります。
もっともそのためには、それぞれのカゴが離れた場所に置いてある(関係の薄いものであること)ことが必要です。
同様に不動産に投資する場合にも、特性の異なる不動産に数多く投資した方が、理論的にはリスクが減ることになるのです。

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